- 2019/09/24
- 「座る」に新たな価値を。
自動車用シート(座席)のセンシング技術とIoT技術を融合させ誕生した愛されるシート®️の開発プロジェクトリーダーに話を伺いました。
― 愛されるシート®️は多くのイベントに出展されていますね。子どもから大人まで、皆さん楽しそうに座って体験されていたのが印象的でした。愛されるシート®️とはどの様なシートなのでしょうか?
愛されるシート®️は「座った人が自然と笑顔になる」
愛されるシート®という名前ですが、実は自動車用シート本体のことではなく、いろいろな椅子やシートに取り付けられる新しいシステムのことをそう呼んでいます。ネーミングが珍しいとよく言われますが、多くの方が愛着を持って永く使いたくなるシートシステムでありたいという想いからこの名前をつけました。
テイ・エス テックが長年培ってきた自動車用シート技術とIoTを融合させた愛されるシート®は、座っている人をセンシングし、動きなどの情報を見える化するだけでなく、椅子やシートをスマートフォンなどのアプリケーションと連動したコントローラーにすることで、様々な場面での新しい楽しみ方を提案しています。
使われている要素技術は、すでに世の中にあるモノです。しかし、それらの技術をこれまでにない組み合わせで活用することにより、アプリケーション次第で無限の楽しみ方を提供できるシステムになりました。また、ウェアラブル端末などとは異なり、利用者は椅子やシートに座るだけで気軽に楽しめるので、車内はもちろん、ご家庭や公共施設等、座れる場所ならどこでも活用できる汎用性の高さも特徴です。
これまでさまざまなイベントに出展し、親子連れ、高齢者、障がいのある方からプロスポーツ選手まで、多くの皆さんに体験していただきました。最初、説明してもけげんそうにされていた方も、体験すると自然と笑顔になり、一緒に体験した皆さんと楽しそうに話をされていました。愛されるシート®️の最大のポイントは、自然と笑顔になりコミュニケーションが生まれることですね。
― その場で生まれる笑顔とコミュニケーションは、ネット社会にこそ必要かもしれませんね。愛されるシート®️が目指していることはそういったところにあるのでしょうか?
「ひとと人を巡り合わせる(=仕合わせる)メディア」として、 笑顔を提供するという社会貢献を通じて、ビジネスへも広げてゆきたい
そうですね。企業としては、将来の収益に貢献する商品を生み出すことは事業成長に不可欠なものですが、同時に、私たちは「自動車のシートを通して社会に貢献する」という使命をもって開発に取り組んでいます。愛されるシート®の開発にあたっては、この双方を実現するため、プロジェクトの軸となる「将来、TS製品はひとと人を巡り合わせる(=仕合わせる)メディアである。個人・家族・社会・環境に幸せを提供する」というビジョン[抜粋]を設定しました。
このビジョンから生まれた愛されるシート®は、“座ることで楽しむ”という切り口から笑顔を提供できる不思議な魅力を持っていると感じています。イベントを通じ、これまで沢山の方にご体験いただき、多くの笑顔が生まれる瞬間を見てきました。「このシートに座りたい!」「使いたい!」という声も沢山いただいています。笑顔を提供するという社会貢献を通じて、ビジネスへも広げてゆきたいですね。
― 開発にあたっては、プロジェクトの軸となる想い(ビジョン)があったのですね。このビジョンはどの様に生まれたのでしょうか?
デザイン・ドリブン・イノベーション※1の概念に沿ってプロジェクトを推進
きっかけは、「新しい商品を創る」ことを目的に、将来のテイ・エス テックを担う社歴10年程の社員10名で構成された、社長発令の「新魅力商品創出プロジェクト」です。このプロジェクトは、「未来を想像し、そこで求められる商品を考える」というところからスタートしました。初めは正直、壮大すぎて、すごいプレッシャーでしたね。
新しい商品を創るには、大きく分けて2つのスタートがあると考えます。困りごとなどを解決することで消費者満足を高めるイノベーションと、商品に全く新しい使い方やライフスタイルなどを提案することで起こるイノベーションです。私たちは後者に対し「デザイン・ドリブン・イノベーション(DDI)」と呼ばれる手法を使い、シートに座る意味と向き合いプロジェクトを進めました。
全く新しいコトを社会に提案するためには何が必要なのか。私たちはキーとなる“何か”を見つけるため、メンバー一人ひとりが、経済や哲学、社会学、宗教など、さまざまな専門分野を学び、多くの有識者と対話し、多角的な視点から物事を見て、考え、整理することから始めました。日本で起きている事、他国で起きている事、地球規模で起きている事、すべてを自分事として捉え、経営者の目線でリソースをどのように使えば、社会をより良くできるかということを考え抜きました。こうしたプロセスの中から生まれたのが先ほどのプロジェクトビジョンです。
この様なプロジェクトの進め方は、当社では初めてのことでした。最初は全てが手探り状態で、メンバーと何度も話し合う中では、お互いの理解が得られず意見がぶつかることもありました。上手くいかないことが続いても、皆でプロジェクトビジョンを振り返り、愚直に推進し続けたことで、私たちのビジョンを具現化した愛されるシート®️にたどり着けたのだと思います。
このビジョンは社内で理解を得る上でも役に立ちましたね。愛されるシート®は当社にとって新しい領域の商品だったため、それで何がしたいのか、何ができるのかなど、トップや同僚に上手く通じないこともありました。そんな時、私たちのビジョンを語り、実現のために愛されるシート®がどのような役割を担うのか、熱心に伝えていくことで、理解を得ていくことができました。今では、会長・社長からも強く背中を押してもらえています。
※1 デザイン・ドリブン・イノベーション:Design Driven Innovation(DDI)。イタリアミラノ工科大学教授ロベルト・ベルガンティ氏によって提唱された概念で、製品に新しい「意味」を与えることによって生じるイノベーションのこと
― 最後に、今後愛されるシート®️は、どのように展開してゆくのでしょうか?
新しい「座る」の価値を提案し続けられる存在へと育ててゆきたい
愛されるシート®は、まだ生まれたばかりの商品です。このシートシステムとその可能性を社会へ広く発信し、多くの方に知っていただき、体験していただく中で、人や企業、団体、地域社会と出逢い繋がり、新しい「座る」の価値を提案し続けられる存在へと育ててゆきたいと考えています。
そして将来、愛されるシート®️の付いている車が欲しいという人が一人でも多く増えていくことで、私たちに新しいビジネスをもたらし、企業成長にも貢献できると信じています。愛されるシート®️はそれを実現していくためのプラットフォームです。